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超音速複葉翼機の世界へ  【1】「MISORA」の夢、み空を翔る

2007.8.10更新

 今回ご紹介するのは、大学ならではの夢に溢れたプロジェクトです。東北大学の機械系を目指す高校生の中には、飛行機が好きでパイロットになりたい、あるいは自分で新しい飛行機を開発してみたい、と思う人もいらっしゃることでしょう。そういった皆さんに、大学がいまどのような夢を描き、何を目指そうとしているのかをお伝えしたいと思います。
この超音速複葉翼機「MISORA」は、衝撃波による騒音を大幅に減少させ、しかも燃費を向上させる、まったく新しいコンセプトの飛行機なのです。

《瀬名秀明》

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 人にやさしい 環境にやさしいを ニッポンから。

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 まず東北大学流体科学研究所 融合流体情報学研究分野 大林・鄭研究室のホームページに掲げられたイラストをご覧いただきたい。ふしぎな姿の複葉翼機が空を飛んでいる。これが「MItigated SOnic-boom Research Airplane」、通称「MISORA(ミソラ)」だ。思わず息を呑むデザインで、ちょうど今回の取材が終了した直後に東北大学のオープンキャンパスがおこなわれたのだが、そこでも「MISORA」の展示には多くの高校生が見入っていた。

「MISORAは学生たちがつけた名前で、漢字で書けば『御空(みそら)』。万葉集にも出てくる、空の美称です」

 と、大林茂教授は説明する。MISORAの模型は応接セットのテーブルの中央に静かに置かれていた。


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大林茂【おおばやし・しげる】1960年、横浜市生まれ。東北大学流体科学研究所附属流体融合研究センター基幹研究部融合流体情報学研 究分野教授。東京大学大学院工学系研究科航空学専攻博士課程修了、工学博士。NASA Ames研究所客員研究員を経て1994年、東北大学工学部へ。数値流体力学と進化的計算(遺伝的アルゴリズム)およびそれらの手法の航空機・流体機械設計への応用について研究している。

 ここは東北大学片平キャンパスにある流体科学研究所(略称:流体研)。東北大学機械系は青葉山の広大な敷地内にあるが、この片平キャンパスは仙台駅から歩いて約20分の平地にある。かつて武家屋敷が並んでいた区域で、100年前に東北大学が生まれた場所だ。取材の日はあいにくの雨だったが、ふだんは散歩に最適のキャンパスで、おまけに近くには古書店の並ぶ小径もある。



 東北大学片平キャンパスには大正から昭和初期に建てられた
 貴重な近代建築が数多く残っている。


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 超音速旅客機の代表であるコンコルドは、衝撃波による騒音(ソニックブーム)と高い燃費のため2003年に運行終了してしまった。衝撃波による空気抵抗(造波抵抗)が生み出す騒音はばりばりと耳をつんざくほどで、住宅の窓ガラスも振動する。しかし超音速旅客機のニーズ自体がなくなってしまったわけではない、との見方もある。いまでも裕福なビジネスマンが世界を駆け回るための十数人乗りビジネスジェットの開発はさかんにおこなわれているという。
 つまり逆にいえば、衝撃波による騒音を抑えて環境問題をクリアし、燃費を向上させることができれば、未来を担う新しい飛行機が実現できる。

   [コラム]  大林教授室の本棚には、ちょっと眺めただけでも猛烈に食指を動かされるタイトルがずらりと並んでいた。とってもセンスのよい本棚である。ウェブサイトに掲載されている「大林文庫」を参考にして、次に読む本を見つけてみよう。

【用語解説:ソニックブーム】
飛行機が超音速飛行をする際に、機体が空気を押しのけることで発生した空気の波(衝撃波)が地上に伝播し、落雷のような音として聞こえる騒音のこと。コンコルドのソニックブームは窓が破損することがあるほどの強度であり、米国連邦航空局(Federal Aviation Administration)により、地上上空での飛行が禁止された。

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