多田隈 ぼくは機構をやっていて、圭司さんはロボットをどう動かすか。
大野 ばりばりの機構屋(注2)さんは多田隈くんだけかな。
瀬名 では若い人から順番に、ご自身の研究紹介をお願いします。
(注1)平成18年度から平成22年度までの「NEDO戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」。情報はこちら。
(注2) 機構屋 研究者は自分の立ち位置をこのように「××屋」と表現することが多い。謙遜と自負の両方が入り混じった感覚。
多田隈建二郎 全身球体のロボット


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多田隈さんがポケットから取り出したのは2つの車輪。そのうちのひとつは、全方向移動のために開発された車輪で、ロボットのサッカー試合「RoboCup」でもよく利用されているものだ。ホイールを回せばその方向に車輪は動くが、実は車輪には小さな円筒形の筒がぐるりと取りつけられていて、これは自由に動くので車輪は横滑りする。そのためこの車輪はハンドルの切り返しをしなくても全方向に動くことができる。
しかしこの車輪は段差や溝に弱い。それを克服しようとしたのが、多田隈さんの開発した球状の車輪だ。この画期的なアイデアはどこから生まれたのか?
多田隈 この球状の車輪の研究は、あらゆる方向に移動できる全方向移動ロボットの開発を目指して始めました。家庭内や工場内を考えてみますと、狭い空間が存在するので、自動車のようにステアリングを切る運転は難しい。段差乗り越え機能も備えた全方向移動機能が求められるんですが、なかなかそういう機構はこれまで存在しませんでした。いま全方向移動車輪というと、フリーに回転する小さな方向(円筒)を円周上にいくつか持っているいう構造がほとんどです。この構造の難点は、フリーに回転する円筒部分の直径が小さいので、ローラーが回転する方向に段差や溝があるとスタックしてしまうことですね。
そこでフリーに回転する円筒部分の形状を半球状にしたらどうかと考えました。車輪機構の中心を回転させると接地点において駆動力が発生しますが、その90度方向には半球状の車輪がフリーに回転することで、キャスターとして働きます。
従来の全方向移動車輪と全方向性を出す機能はいっしょですが、フリーに回転している半球状の車輪の直径が車輪機構の全体の直径と等しいので、段差乗り越え能力が高いというのがポイントです。 ただし、半球状の車輪が回転できない「特異点」が存在するので、そこをうまく解決する必要があります。ちょうど半球状車輪の車軸が地面に設置するときは、半球状車輪は回転できません。そこで、その位置にフリー回転するローラーを配置することで問題を解決しています。
この車輪を3つ以上取りつけると、あらゆる方向へ瞬時に動けるロボットが出来上がります。実験用の車両には4個配置して構成しました。
この車輪の性能を、従来の車輪と徹底的に比較してみました。
段差乗り越え実験です。従来のものですと10mmの段差でも引っ掛かって空回りする。でも今回開発したものは16mmでも行けます。
溝乗り越え実験ですが、溝の幅は50mmで、従来のものだとスタックします。抜け出るのもままならない。でもこちらはは幅が63mmでも大丈夫。
瀬名 これだと、全身車輪という丸いロボットもできるわけですね。
多田隈 はい。もともとは東工大の博士課程のときに、広瀬茂男先生の元で荒れ地を移動する展開型の惑星探査ロボットの研究に携わっていました。全方向に行けて、荒れ地でも進めるロボットですね。それに、自分で趣味でやっていたロボットもありました。その頃、正四面体の形状のロボットを考えたんです。正四面体型だと、どう転がっても「転ぶ」という姿勢がない。放り投げても必ず3つの車輪で接地するのでうまく動けるんじゃないか。
この発想は、ぼくが博士課程に入った頃くらいに出てきたものです。不整地や惑星に空から降りていったとき、いかにロボットを倒れにくくするか、というのが博士課程のメインテーマとしてあり、最初に車輪を収めていて、接地してから車輪を出す展開型のロボットの開発に携わっていたんですが、軽いロボットや小型のロボットであれば着地の衝撃も少ない。正四面体の頂点にそれぞれ車輪がついていれば、転倒してもそのまま継続して作業できる、というのが発想の元です。車輪自体も新しそうだと当時の助教授の米田完先生からいわれて、全方向移動車輪の研究を始めたのです。
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