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2008.3.7更新

若手ロボット系研究者に聞く3回目は、全体討論。研究に教育にと奮闘する若手は、いま東北大学機械系をどのように見ているのか? 機械系の学生はどのようにして伸びてゆくのか? 現場からの声を今回も熱くお届けします! 《構成:瀬名秀明》

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若手ロボット系は仲がいい?



瀬名 ではここから皆さんの現在・過去・未来の話をうかがっていきます。まずは現在の話ですが、東北大学機械系は住みやすいですか。

大野 ぼくはけっこう楽しいですね。これだけ狭い中で多くのロボット研究者がアクティヴに動いているのは珍しいと思いますよ。飲み会で集まると楽しい。

平田 新年会では15人くらい集まりましたね。

瀬名 ロボット系の若手は20人ほどですから、飲み会の出席率もなかなか。

 ここへ来て感じたことですが、研究室間のつながりが強いのが新鮮でしたね。前の大学だと割と研究室間は独立していたけれど。

多田隈 先ほどの研究の説明の途中で話題に挙がった、圭司さん、大野さんたちが参加した地下街におけるロボットの実験でも、複数の研究室でそれぞれの個性を生かせたりと、非常に興味深いですね。

平田 昔のロボット系は、あまりそういったつながりはなかったみたいですね。私が助手になったころに、ロボット系だけじゃなくて、機械系の若手みんなで飲もうと声を掛けたんですけれど、機械系は所帯が大きすぎて、2回ぐらいで終わってしまった。でもせっかくいるんだからってことで、圭司さんが来たころ、ロボット系だけでも集まろうよということで声を掛けて、そういう機会が多くなった。各研究室間でプロジェクトの連携が始まって、大きく横のつながりができてきた時期だったと思います。

 ちょうどぼくが来たときにそうだったから、そういうイメージを持っているんですね。

大野 ぼくが来たときはウェルカムパーティを開いてもらったので、なんてアットホームなところなんだと思いました(笑)。

多田隈 ぼくもここへ所属したばかりのとき、「歓迎会やりましょう」と圭司さんからポンと機械系の、いわゆる若手と呼ばれる方々宛にメールがきて、「ああ、機械系はこんなにネットワークがしっかりしているんだ」と感じた覚えがあります。

永谷 飲みたかったんだよ(笑)。

大野 多田隈くんが所属していた研究室とは、以前にレスキューロボットで共同研究をしていたよね。多田隈くんが東工大にいるとき、よく会っていたんですよ。今度東北大学に来るっていうんで、圭司さんとびっくりしていました。

「分野セミナー」で学生は伸びる!



瀬名 瀬名 東北大学の学生さんは他大学と比べてどうですか。

全員 すっごくまじめだね。

大野 ポテンシャルが高い。すごくやる気があって、伸び率がいい。気がつくとぐいって伸びてゆく。

永谷 修士1年の終わりに「分野セミナー」っていうのがあるんですよ(2008年は3月3日、4日の開催)。他の大学ではあまりやらないと思うんだけれど、修士課程の中間発表ですね。結果が出ていない人はここでまずい。だから必死になって実験をするので、自然と伸び率が高くなる。

 正確にいうと中間発表よりはフランクで、教授抜きでやりましょうという感じ。

永谷 多くの修士にとって、最初の難関だね。

平田 修士の学生にとっては他の研究室の人にも見てもらう最初の発表。ここで研究がまとまっていないとかっこわるい。

永谷 しかもその発表を見るのは、教授じゃなくてぼくらくらいの年代の先生たち。この年代がいいたい放題なんです(笑)。学生としては、「何やっているんだ、このくらいのことしかできていないのか」といわれちゃうとまずいから、一所懸命やる。すると、ぐんと伸びる学生が多い。若い先生はみんなとんがっていますからね、特に自分の専門分野でいい加減なことをされちゃうとカチンと来て、だめだよと叱りたくなってしまう(笑)。しかし、こんなことをいう自分はもう若くないかなぁ。40歳は微妙だ(笑)。

平田 締切の効果はありますね。それまでにまとめなきゃと思う。

永谷 教授から何かいわれるより、年齢の近いぼくらのほうが、学生にとってインパクトがあるのかも。頑張っている若手研究者が、きつくいう傾向があるよね。

大野 もちろん教授が審査をする修士課程の公聴会でも、鋭い質問が出ています。ぼくが直接教えている学生ではないんですが、まったく専門ではない教授の先生からすごくいい質問が来たと、いまの博士課程の学生が話していました。その質問に触発されて研究が進んだと。


ものづくりのイメージをつかめ


瀬名 学生さんとの研究生活の中で、思い出深かったことは?

大野 ぼくや圭司さんがむかしいた筑波大の油田研究室って、わりと情報系なんです。当時は機械やハードウェアをつくることはなかったんですが、こっちに来てみると、みんな必ずつくりたいというんですよ。この差は何だろうと最初のうちは戸惑ったんですが、印象深かったですね。こんなセンサをこんな仕様でつくろうよというと、学生さんたちはすぐに考えてきてくれる。

瀬名 それは機械系の学生だから?

大野 そうですね。ぼくが指導している学生は何時間も製図を書いて、7割くらいの子はちゃんとできて、しかも速いんですよ。もちろんつくるのは外部の業者にお願いするんですが、そこはすごく驚きでした。設計して、発注して、業者が納品してくれると今度はすぐに組み上げる。組み上げてかたちができるとすぐまた伸びてゆく。そのスピードがおもしろかったですね。ぼくが最初に指導した学生は高専出身で、優秀な子でした。圭司さんのところにも同年代の高専出身の子が配属されていましたよね。

永谷 高専出身ですから大学3年で入学してきます。そこからすぐに研究室配属になる。

大野 そうですね。彼らふたりはもともと前にあった中野研究室(注12) から別の研究室に移った学生さんたちなんです。お互いがいいライバルで、彼らはおもしろかったですね。高専出身の子はいい腕を持っていることが多いです。

多田隈 私の先輩の高山さんもおっしゃっていたことですが、動くことを厭わない子が多いですね。自分から進んで手を動かし研究をこなしていくタイプが多いと感じています。

平田 高専は製図もそうですが、日常的に旋盤やフライス盤を使っていろいろなものを作るので、つくることのイメージが速いんですね。私の同級生にも高専から来た人がいて、ミニ旋盤があって工作するんですが、「これどうやってつくったの?」というくらいのものを持ってきていました。東北大学の学生さんに比べると、高専の人は圧倒的にものづくりの実習時間が違うので、これなら簡単につくれるとか、ここの太さはこのくらいないと安定性が悪いとか、イメージがすぐに湧いてくるようです。

大野 そういう学生さんがひとりいると、研究で図面を書かせたとき周りの子も仕上げが速くなってくる。これはすごいなあと思いましたね。
なんて機械系の学生は技術力が高いんだろう、ぼくは何も知らないのに(笑)。
そこがすごく刺激的でした。

中野栄二教授が主宰していた研究室。中野教授は2005年に定年退職し、現在は千葉工業大学の教授。1988年から仙台で開催されている「知能ロボットコンテスト」の発起人であり、現在も審査委員長を務める。瀬名の現在の特任教授室は、かつての中野教授の部屋である。瀬名秀明『ロボット21世紀』のインタビュー記事も参照されたい。



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