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東北大学 工学部 瀬名秀明がゆく! シリーズ29 スプライトサット スペースアート作家たちからのメッセージ

 皆さんはスペースアートという分野をご存じでしょうか。私たち人類史上の中には多くの文化や学問が生まれ日々進歩し続けてきました。これから私たちが近い将来訪れる可能性のある宇宙で既に人類の歴史が動く中、スペースアートの歴史も既にはじまっていた!!! スペースアート作家と東北大学・機械系…!? 一見、相反すると思われがちなこの二つの分野の夢のコラボレーションを2回に分けてお届けします。どうぞお楽しみください。
《構成:チュン吉左衛門 / 写真提供:吉田・永谷研究室、瀬名秀明》

2008.10.24更新

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吉田研究室にスペースアート作家たちがやってきた!


東北大学 工学研究科 吉田研究室
  スペースアート作家 小野綾子
 
 

スペースアート作家
小野綾子

【おの あやこ】

5歳の頃から宇宙に興味を持ち、美術大学を通して深めた芸術体験を経て宇宙開発に関わる夢に近づく道をアーティストとして切り拓いてきた。今は宇宙への長期滞在の為に応用できる芸術関係の心理学に取り組んでいる。アーティストとしては人と宇宙をテーマとした絵画制作や無重力状態を活かした新たな芸術表現を考案・試作、そしてビデオ・アートを製作するほか、作曲し詩も創作。日本の宇宙機関(JAXA)や国立天文台、国際宇宙会議などで宇宙をテーマとした芸術展を開催したり、ヨーロッパの宇宙関係会議やNASAでの展示に参加したり国際的に活躍し、英文での本や雑誌でスペースアーティストとして紹介された。最近は、宇宙をテーマとした絵画作品の審査員も務める。

2000年
女子美術大学 絵画科 洋画専攻 卒業

2002年
東京藝術大学大学院 美術学部 修士課程 美術研究科 油画専攻 修了

2005年
9月より文化庁新進芸術家海外留学制度にてパリ・NYを拠点に1年間留学

2007年
6-8月 国際宇宙大学のサマーセッション・プログラムに参加(中国/北京)

【受賞歴】
1999年
100号コンクール 1位入賞 《女子美術大学》

2000年
女子美術大学卒業制作賞 受賞


エネルギー賞展 入選 《TEPCO銀座館(東京)》

2002年
トーキョーワンダーウォール 公募展 (入選)《東京都現代美術館で展示》

2004年
日本アートアカデミー賞 (入選)《全国巡回展》

2006年
レオナルド・ダ・ビンチ スペースアート賞 特別賞受賞 《ISDC(米国)》


 

 青葉山の光り輝く緑の中に蝉のざわめきが響き渡りはじめたある夏の日、本シリーズvol.26でもご紹介した吉田和哉研究室に2人のお客様が訪れました。お客様は、月面上に禅ガーデンを作ろうということを提唱しているスペースアート作家の小野綾子さんと月の模擬砂で陶芸をされている佐藤百合子さん。瀬名秀明特任教授も招かれさっそく吉田研究室の学生たちとプレゼン&トークが行われました。その珍しい模様をお楽しみください。

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まずはじめに、スペースアート作家の小野綾子さんより プロジェクターを使用して月と火星の禅庭シミュレーション映像を見せていただいたり、国際宇宙大学のサマーセッションプログラムに参加した際のお話や宇宙での生活(有人宇宙活動)においての深刻な問題、それをふまえてのプロジェクトについてのお話を伺いました。

 

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小野さんがこのプロジェクトを始めたきっかけは、文化庁新進芸術家海外留学を通し欧州宇宙機関を訪れた際のこと。有人宇宙活動においての人間のさまざまな知覚的感覚の変化が心と体におよぼす影響の存在を知った事だったという。月にも火星にもある石や砂を使い何かできないか?と考えた小野さんは、日本古来よりの枯山水という手法を用い、線を描くことによって情景を表現する禅の庭のようなものを作ることで、無機質的になりがちな月面上にも癒しの空間が演出できるのではないかと考えた。
手法:ローバーを使って禅庭のような線を引いたり、ソーラーパネルの色形の工夫などの景観デザイン、マルチチャンネルスピーカーを使うサウンドスケープ(音風景)デザイン等をして環境をデザインしていく。(写真右:小野さんの描いた月における禅庭のデザイン) 宇宙飛行士の作った禅の庭が将来の宇宙旅行者が訪れた際の観光名所になる可能性もあり得る!?

 

「スペースアートは、地球に慣れ親しんだ人類が宇宙空間においてもポジティブになれるよう、芸術的なデザインやアート作品で新たな宇宙旅行での可能性を切り拓き、有人宇宙活動をより豊かで実りの多いものへと導く可能性を秘めていると思います。ぜひ工学者の皆さんには、ソーラーパネルを単なる発電のための装置と思うのではなく、たとえば宇宙の中において光合成を行う植物をイメージするなど、もっと広がりのある発想を持っていただけたらと思います。」と話す小野さんに「様々な色のソーラーセルを作っている人たちがいるんだね。もっと早く気づいていたら僕らの衛星(本シリーズvol.26スプライトサット)も色とりどりにしたかったな。(笑)」と吉田教授。
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発表後は、参加者たちとのトークセッションに。小野さんが長期滞在の宇宙飛行士にインタビューを行った際のお話(宇宙空間において人間の感覚、例えば聴覚や触覚からくるものがストレスにもなり、また癒しにもなったという実際のお話)や有人宇宙生活でおこりうる人間の芸術的センスの変化、地球を含めた宇宙の美しさなど、話に花が咲きます。
学生 「どうしても工学的な観点で見てしまうのですが、ローバーを動かすプログラムが気になってしまいました。熊手をワイヤーで引っ張っていたけれど、運動制御的には難しいとされる事です。ローバーはマニュアルで遠隔操縦したのですか?」
小野 「コンピュータを使ってあらかじめ模様を想定し、そのパターンをローバーに与えて走らせましたので、自動制御というべきなのかもしれません。が、実際一回ではうまくいきませんでしたのでいろいろと試行錯誤を繰り返しました。」


 

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瀬名 「アフリカの砂漠を見ると何もないようだけど、風紋にしろ幾何学的な美しさがあって、それをみているとアラビックの世界に数学とか発達したのが何となく分かるような気がするんだよね。月とか火星にも何かしらの幾何学的な自然現象があって受けるインスピレーションから生まれる芸術ってあるのではないかと思います。」
学生 「いつか月に人類が住むようになり、
月で生まれた人類が地球に降りた時にどんなアートを作るのか興味深いと感じました。」

 


 
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