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東北大学 工学部 瀬名秀明がゆく! シリーズ29 スプライトサット スペースアート作家たちからのメッセージ

 前回に引き続きスペースアート作家のお二方と瀬名秀明先生による吉田研究室訪問です。
 今回は、吉田研究室内での日々の実験の様子を見せていただきました。
《構成:チュン吉左衛門 / 写真提供:吉田・永谷研究室、瀬名秀明》

2008.11.14更新

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ROBOTたちとテラメカニクス


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【エルドラード-I】

4輪型の宇宙探査ロボット(ローバー)研究モデル。 金色に輝くボディーから黄金郷のイメージと、冒険のイメージから命名。 通称どらちゃん1号
瀬名秀明がゆく「シリーズ24」にも登場

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【エルドラード-II】

4輪型の宇宙探査ロボット(ローバー)研究モデル。
エルドラード-Iをひとまわり大きくしてパワーアップしたモデル。
通称どらちゃん2号
2008年5月に米国パサディナで開催されたIEEE ICRA Robot Challengeに参加し、自律探査のデモを行った。
参照はこちら

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【ケナフ】

千葉工業大学の小柳栄次教授がデザインしたレスキューロボットの研究モデル。クローラー型ロボットの最高傑作!  現在、東北大学田所研究室、千葉工大、筑波大学,岡山大学などと共同研究を進めている。 瀬名秀明がゆく「シリーズ24」にも登場
参照はこちら

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吉田研究室内でのロボットたちのデモストレーションを見学する(左から)小野綾子さん、瀬名秀明特任教授、佐藤百合子さん、吉田和哉教授。写真中央は宇宙探査ロボット(ローバー)・エルドラード-II、右手前サーチ&レスキューロボット・ケナフ。こうしている間もこれらのロボットは、前位置に取り付けられたレーザースキャナより目に見えない赤外線レーザーを発して、研究室内の3次元形状の計測を続けている。

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計測された3次元形状データはPCに送られディスプレイ上に表示される。画像表示の視点は、操縦者が自由に変えることができる。ピンクの部分が計測データ。これに基づいてメッシュ状の地図(Digital Elevation Map)が生成される。この地図に基づいてロボットは平らな場所と障害物を判断し、移動可能領域内を自律的に走行する。

 

こちらは、3次元データ表示のグレードアップバージョン。複数点で計測したデータを合成して、機械系の建物周辺の広域地図が作られていた。座標データの上にカメラで撮影された実画像をテクスチャとして貼り合わせて、没入型ドームという特殊なディスプレイ上に投影される。しかもプレステ3のコントローラを使って、誰でも自由に3次元空間を動き回ることができるようになっている。飛行機のように飛び回ることも! 臨場感の高さに思わず笑みがこぼれる瀬名先生! 次回の小説の主役はコレ?!

 

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天気の影響を受ける事なく、いつでも実験可能な室内実験用の砂場。1m×2m程度の決して広くない、箱庭のようなフィールドだが、制御モデルの検証などの目的に対して効率の良い実験ができるようになっている。この箱庭の底にはジャッキが付いていて自由な角度を設定し傾斜を設定することが可能。サラサラの砂の傾面でローバーがどのくらい滑るか、すべりを補償して思い通りの走行制御をするにはどうしたらよいか、などの実験が行われている。<ようこそ〜>の文字はご愛嬌!(写真:右)
さすがに砂を扱い慣れている様子の佐藤さん。(写真:左上)


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吉田 「実験の際、2種類の砂を使用しています。砂の力学、土質力学のことをテラメカニクス(略してテラメカ)といいます。地球・地面の<テラ>、そのメカニクス(力学)という意味です。このテラメカ分野の実験に共通で用いられている砂に<標準砂>というものがあります。これは下関の豊浦で取れるものなのですが、豊浦サンドとしてのこの業界の標準として使用されています。粒の大きさも揃っていて、非常にサラサラとした素直な砂です。もう1種類私たちが実験に使っているのが月模擬砂(レゴリス・シミュラント)です。この砂は、粒度分布や力学的特性がほんものの月の砂とほぼ同じといわれているのですが、踏みしめると硬くかたまる性質があります。未踏の月表面にはこの砂がふわっと堆積していると思われますので、その状態を模擬するために毎回耕してコンディションを整えるだけでも難しいのです。テラメカ標準砂とは正反対に、非常に性質(たち)の悪い砂ですね(笑)。」

佐藤 「密度などの条件で性質が変わってしまうのですね。『毎回耕してコンデ ィションを整える』・・・感覚として良く解ります。 『表面を均す』だけでは足りないのですよね。 陶芸でもいえる事で、そこが難しいところなんですよね。 陶芸では土に水分を加えて、可塑性を調整しながら製作をすすめます。しかしその過程でどんなに水を加算しても、最終的には 乾燥や焼成の段階で水結晶となっているものまで全て抜けてし まいます。 よって途中どんなに湿気が加わっても焼成後の作品の組成が変 わるはずはないと考えられるのですが、 実際は焼くごとに作品には違った表情が出てきます。 考えられるとすれば何度も砂に振動が加わる度に、 粒の重いものは下に、軽いものは上に移動し、そのため使用の際どの部分をすくいあげたかで微妙に砂の組成が変わり、釉薬 の調子も変わってくるのではないでしょうか。 レゴリス・シミュラントというやつは陶芸としても扱いづらい砂なのですが、それでもやはり、私に とっては、とても魅力的な砂です。」

 

これが吉田研究室で実験に用いられている砂だ!

画像:豊浦サンド

【豊浦標準砂(豊浦砂)】
山口県下関市豊浦町産の砂。土質力学(テラメカニクス)の分野において標準として使用される砂。粒の大きさが揃っていて、粒同士が凝着することもほとんどないため、「サラサラ」とした振る舞いをする。砂時計の中に入っている砂のイメージに近い。

画像:月の模擬砂

【月模擬砂(レゴリス・シミュラント)】
月の表面を広くおおっている灰色の砂を模擬したもの。アポロ宇宙船による月探査の際に、宇宙飛行士がたくさんの月の石や砂を持ち帰っており、それらを分析して得られた知識に基づいて、粒度分布、化学的組成、力学的特性などの性質がほぼ等しくなるように調整されている。拡大写真のように、いびつな金平糖のような粒からなり、それぞれの粒の大きさは1〜100ミクロン程度。化学的には地球上の玄武岩、安山岩に似た鉱物を含んでいる。陶芸家の佐藤さんも御用達の砂。

 

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砂のような軟弱な土壌の上で車輪がどのような牽引力を生じることができるかを研究するため、車輪一個だけを砂の上で走らせる実験をおこなっている。車輪が土を蹴って出した力をセンサーで測定する。写真左の装置では、大気中で実験をおこなってきた。しかし、実際の月の世界は真空中。そこで、装置を小型化してアクリルケースの中におさめ、空気を抜いて真空に近い状態での実験もすすめている(写真左)。その結果、空気の有無によって砂の性質や、砂を蹴る際に生みだされる力の大きさにも違いがあることがわかってきている。

 

小野 「月の砂は細かくて、尖っていて、モノを傷つけやすい特性があって、宇宙服にも付着して大変らしいのですが、ローバーも何か対策等行っているのですか?」

吉田 「防塵対策も今後考えていかねばならない課題の一つです。モーターや歯車に砂が噛んでしまうと厄介なので、まめに掃除をしながら実験をしているのですが、月面で長期にわたって探査活動を行うロボットでは何か根本的な対策が必要だと思います。いいアイディアがあったら教えてください。」 「研究室をご覧いただいたように、私たち工学の研究というのは、ものに触れて手を動かしながら、新しい機械や新しい技術を創り出しているのです。手を動かしてものを創造するという点で、芸術(アート)の世界と共通性が高いと思います。いろいろな切り口で、コラボレーションができればいいなと思います。」

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vol.29<スペースアート作家からのメッセージ>終了

 




 
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