ミャンマー連邦共和国と超小型衛星開発を開始

- ミャンマーの農林水産業や大規模自然災害の軽減に貢献 -

2020/07/02

【概要】

北海道大学,東北大学及びミャンマー航空宇宙技術大学(MAEU)は,ミャンマー連邦共和国初となる人工衛星の開発プログラムを開始しました。5年間でミャンマーからの留学生に対し衛星開発のキャパシティビルディングを実施しながら,50kg級の超小型衛星2機の開発と打ち上げを行い,搭載される先端的観測装置を用いて,ミャンマーの農林水産業や大規模自然災害の軽減に貢献します。プログラムの予算(約17億円)はミャンマー連邦共和国政府が負担します。

【プロジェクト開始に至った経緯】

北海道大学・東北大学のグループは2015年より,フィリピン共和国から大学院生を受け入れて同国が開発する1号及び2号衛星の製作,打ち上げ及び運用を協力して行ってきました(PHL-Microsatプログラム)。この成功が契機となって,2019年にはフィリピンに宇宙庁(PhilSA)が設立され,初代長官(閣僚)にフィリピン側のプログラム責任者であったフィリピン大学ディリマン校のジョエル ジョセフ ジュニア サクロ マルチアーノ教授が就任されました。

こうした衛星開発・キャパシティビルディングプログラムは,北海道大学・東北大学が主導する衛星技術やデータを共有し,将来は国境を越えた衛星の相互運用を目指す,アジア9カ国16機関が参画するアジア・マイクロサテライト・コンソーシアム(AMC)の活動の一部でもあります。

【内容・対象・意義】

本プログラムは,PHL-Microsatプログラムと同様に,5年間で2機の地球観測用超小型衛星の開発と打ち上げのほか,衛星に搭載されたマルチスペクトルカメラなど先端的観測装置の効果的な運用とデータ利用を目的としたものです。プログラムの予算(約17億円)はミャンマー連邦共和国政府が負担し,北海道大学,東北大学及びミャンマー航空宇宙技術大学(MAEU)の密接な協力により研究・開発・運用が推進されます。日本の両大学は,ミャンマー側のスタッフ・学生(第1期は7名)を大学院の学生として受け入れ,教育・人材育成をしながら計画の立案から衛星開発・製作,運用,解析を共に行っていきます。1号機は2021年早期に国際宇宙ステーションからの放出を目指します。衛星には数種類のカメラが搭載され,特に超多波長スペクトルイメージャー(SMI)とよばれる装置は,全ての衛星の中で最多の波長選択性を持ち,植生や海洋の状態を従来よりもはるかに高い精度で計測できます。その機能を活かし,同国の農林水産業に貢献することが期待されています。また短時間で正確に,目標物にカメラの視野を向ける技術を使い,世界で最も高精度な雲の立体撮影を行い,集中豪雨や台風の監視と予測に貢献します。

北海道大学・東北大学のグループは,50kg級の超小型衛星5機の開発・打ち上げと地球観測に成功しており,これは数,成功率共に日本国内の大学・企業の中でトップクラスです。また,AMCの活動として,超小型衛星を用いた国際共同ネットワークの構築を進めています。ミャンマーでの衛星開発が成功すれば,ミャンマーはそのネットワークの中心的な役割を担う国の一つになります。近い将来,当グループの指導によって各国が開発・保有する数十機の高機能衛星を連携運用することで,世界初となる災害時の連続撮影観測を実現することなどを目指しています。

【開始時期】

2019年9月1日

お問合せ先

東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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