シュトゥットガルト大学 高性能計算センター
(ドイツ シュトゥットガルト)
2010年10月5日~2010年12月16日(73日間)
「渡航中だけではなく、出発前そして帰国後も、ずっと緊張感が続いていました。報告書を提出してほっとひと安心といったところです」という小松さん。精神的プレッシャーと共にあったシュトゥットガルトでの研究・日常生活のお話を伺いましょう。
「HLRSで最も印象的だったのは、17時ともなるとみんなが帰り支度を始め、家路へと急いでいた光景です。集中して短時間で効率よく、仕事に取り組むことが是とされていましたね。ここでは費やした時間と成果が、必ずしも比例するものではないと考えられているようです。私が知る範囲の話になりますが、日本の研究者は夜遅くまで研究室に留まる傾向が強いようです。それはあくまでも“研究スタイル”なのでどちらに一日の長があるとはいえません。ただ世話役をしてくれた研究者から『人生を楽しめ』とアドバイスされたこともあり、公私を峻別する流儀が大切にされているように感じましたね」と小松さん。『人生を楽しめ』とは“日本式”で私的な時間を犠牲にして研究に取り組んでいたのを見かねて、掛けられた言葉です。「大学のゲストハウス(写真/図3)が生活の拠点となりましたが、研究室から帰る頃には近くのレストランや売店が閉まっていることが多く、日常のリズムをつかむまでに苦労しました。ドイツでは『閉店法』によって平日の営業時間は6~20時、日曜・祝日は完全休業と定められています。最近では緩和される動きがあるようですが、一般に店じまいが早いですね」。慣れない日々を支えてくれたのは、留学で得た経験知でした。「ドクター1年の折に1年間アメリカに留学しました。その時“物事はとらえかた次第”ということを学びました。困難に対峙して、ネガティブに沈むこともできるし、前向きによりよい方向を模索することもできるわけです。その教訓は今回の海外派遣でも大いに活かされたように思います。つまりは“何事もなんとかなる”ということです(笑)」。反省点として挙げられたのは語学力でした。「研究室では英語で十分にコミュニケーションが成立したのですが、ディスカッションなどの場では母語を使われる場面が多く、ドイツ語を解することができれば、さらに活発な議論やスムースなコミュニケーションができたのではと思いました」。
「今回が初めてのヨーロッパ長期滞在。さまざまな見聞から、ドイツはEU主導国としての矜持を抱いていると感じました。また日米関係について問い質されたりするなど、日本が欧州からどのように見られているか、その一端も知りました。今回の海外派遣では、研究面での成果とともに、グローバル時代に生きる一員として、広く高い視座を持つことの重要性を理解することができたと思います」と語る小松さん。世界でしのぎを削る先端科学技術分野は、国際連携・国際競争と無縁ではいられません。今回の海外派遣で得られた知見と経験、異文化の中で磨かれた多様な価値観、そして人的なネットワークが、国際的な研究フィールドに立つ小松さんの基底となることでしょう。
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