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派遣学生REPORT

Institut fuer Mathematik, Universitaet Wuerzburg
ビュルツブルグ大学(ドイツ ビュルツブルグ)

2010年7月1日 ~ 2010年7月31日(31日間)

自然科学とはさまざまな自然現象に共通する法則を見つけ出して記述する学問であり、微分方程式は法則を表現する“言語”としての役割を果たしています。私が研究対象とするレブナーLoewner方程式もそのひとつです。これは1900年代初頭、数学上の未解決問題として多くの数学者や数学愛好家たちの前に立ちはだかっていたビーベルバッハBieberbach予想にアタックするため、1923年に編み出されたものであり、1984年にはこの理論を用いた同予想の完全解決がなされました(ルイ・ド・ブランジュの定理)。レブナー方程式は1999年に導入されたSLE (Schramm Loewner evolution)という確率微分方程式の理論に応用され、近年再び脚光を浴びています。

本海外派遣においては、Stephan Ruscheweyh先生の助言のもと、アールフォルスAhlforsの擬等角拡張条件の拡張に関する新しい着想、また氏が提示した積分変換の問題Danikas-Ruscheweyh予想について、ある程度の結果を得ることができました。さらにはSLEに精通している数少ない複素解析の専門家であるOliver Roth先生とのディカッションを通して、今後の研究方針がより明確なものとなりました。海外派遣で得られた成果については、論文投稿も視野に入れています。時間が限られている渡航期間内に、新しい成果を出さなければと焦るのではなく、現地の研究スタイルを学ぶため、また人的交流を拡げるためといった心安さで臨んだほうが、研究が進捗すると感じました。

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