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派遣学生REPORT

Konstantz University他(ドイツ コンスタンツ他)
2012年12月12日~2013年1月21日(41日間)

ガラス転移現象は長年にわたり多くの科学者に探究されながら、未だに統一的な理解がなされていない非常に興味深い未解決の問題です。私はガラス転移現象に分子動力学法という計算機実験の手法を用いて取り組んでいます。ガラス形成物質はフラジャイルガラス及びストロングガラスという二種類に分類されますが、中でもストロングガラス形成物質はSiO2のような網目構造を形成する複雑な系であるというのが、現在の考えの主流となっています。SiO2のような物質のダイナミクスを計算機実験により研究する場合、原子間相互作用として長距離のCoulomb力が作用する事から様々な問題が生じ、既存の計算機実験が他のガラス形成物質のものと比較して少ないのが現状です。そこで私はこのストロングガラスの一つであるSiO2のような酸化物に対する大規模で高精度な分子動力学シミュレーションを行っています。今回の渡航先のJürgen Horbach教授もSiO2の分子動力学シミュレーションを行い、多くの成果を発表されており、渡航を通してHorbach教授の研究及び自身が得た結果について議論を行う事でより深い知見を得ようと考えました。

Horbach教授の研究室を訪問してからは毎週二回の議論の時間を設けて頂き、Horbach教授の研究について私が抱いていた疑問点及び私の研究結果について十分な議論を行わせていただきました。その後、Horbach教授のアドバイスを基に、以前から興味のあったCurrent-Current相関関数を、私がこれまでに計算したシミュレーションデータから現地の計算機を用いて計算しました。新たに得られた結果について議論を行う事で、非常に興味深い知見を新たに得る事ができました。

日常生活においても、休日や終業後はHorbach教授のグループの院生やポスドクの方とDüsseldorf市街に出掛け買い物や食事を楽しむなど、彼らと交流を行いました。研究活動の他にも、このような現地での生活を楽しむことができ、非常に有意義な渡航となりました。このような貴重な機会を与えてくださいました組織的若手研究者等海外派遣プログラムの吉田和哉先生ほかスタッフの方々に改めて御礼申し上げます。

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Jürgen Horbach教授(左)と、教授の居室にて。