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派遣学生REPORT

Wyle Laboratories
(アメリカ合衆国 バージニア州アーリントン)

2011年2月20日~2011年3月27日(36日間)

ソニックブーム(超音速飛行時の機体から発せられる衝撃波が統合して、落雷にも似た爆音を発生させる現象)の低減は、超音速旅客機の開発・普及に向けた最重要課題のひとつといわれています。現在、複数の設計手法が開発されていますが、いずれも課題を有しており、最適な方法とはいえません。私は、機体軸を中心とした全周方向の圧力波形を最適化する方法によりアプローチしています。既存手法の課題・欠点を解決するこの手法は、今回の受け入れ先研究者であるDr. Kenneth J. Plotkinのアイデアに基づくものであり、滞在中は博士と意見を交わしながら研究を深めていくこととしました。

本海外派遣で得られた成果としては①等価断面積分布の勾配に不連続がある場合、遠方場圧力を求める式に必要な関数の簡単な計算方法を発見、②多重極分布により定義された周辺圧力分布を実現する翼形状を求める方法を未完成ではあるが提案(医療画像の分野などで扱われている Limited view tomographic image reconstruction を航空工学に初めて応用)があります。これらは、ソニックブーム推算精度向上、低ソニックブーム超音速機の新しい設計方法の開発、などに結びついていくものと期待されます。一方Dr. Plotkinへの働きかけを行った結果、NASAが実施する実機によるソニックブーム計測試験に本学の研究員と学生が参加できる運びとなりました。こうした機縁をつなぐ役割を担ったことも、成果のひとつであると自負しています。

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Wyle LaboratoriesのDr. Kenneth J. Plotkin(右)とは、2008 年の グローバルCOE プログラム「流動ダイナミクス知の融合教育研究世界拠点」主催の International Conference on Flow Dynamicsで面識を得て以来、研究交流が続いている。