ものづくりのフロンティアをゆく!

TOPICS2

自動車黎明期の名車、
T型・A型フォードの
レストアにチャレンジ!

多事多難な修復作業に、
教職員・学生、外部専門家による
ボランティアチームが挑む。
シンプルで優雅なボディを間近に。
「自動車の過去・未来館」

 円盤状の屋根を頂いた、スタイリッシュな円筒形の建物。中には、工具を手に一心不乱に作業をする人たちの姿があります。面々は、田中秀治先生(工学研究科ナノメカニクス専攻、准教授)を中心としたレストア※1チームのメンバー。奮闘する相手は、優雅な造形美を誇る約80年前のクラシックカーです。

 2005年、研究交流のあった企業から、米国フォード・モーター社製のフォード・モデルT(1926年製)とフォード・モデルA(1931年製)が工学研究科に寄贈されました。大衆車の原点ともいわれるT型フォードは、近代化されたマス・プロダクション手法を適用して、1908~1927年まで約1500万台が製造され、米国にモータリゼーションをもたらしました。後継車として1927~1931年までつくられたA型は、ギアシフト方式の3段トランスミッションや4輪ブレーキなど、新設計のモデルとして一大センセーションを巻き起こし、名車の呼び名が高いものです。2台は、しばらく学内で観賞されるに留まっていましたが、東北大学100周年にあたりトヨタ自動車からF1エンジンが寄贈されたこともあって、機械工学の魅力を、広く市民の方にも伝えることを目的に、展示館「自動車の過去・未来館」が整備されました。そして、要望として挙げられた「クラシックカーをぜひ走らせて欲しい」という声に応えて結成されたのがレストアのボランティアチームです。

見て触れて、修復しながら理解する。
クラシックカーは“生きた教材”。

 さて、“工学”といえども“自動車工学”は専門外。レストアの専門業者に依頼することもできますが、「自分たちの手で修復しなければ、機械系の名が廃る!」と奮起。数多くのクラシックカーの修復・復元を手掛けられた鈴木三郎さん(トヨタテクニカルディベロップメント㈱)、自動車工学の専門家である山本憲一先生(石巻専修大学/機械系OB)の指導の下、“車好き”の有志教職員や学友会自動車部の学生によるレストア作業が始まりました。「おそらく半世紀近く静態保存されていたのでしょう。経年劣化による傷みが激しく、修復は一難去ってまた一難。問題が山積しているというよりは、新しく生まれてくるという感じですね。しかし、作業に携わっている学生は、レストアの実践を通じて、現在の技術との相違などを楽しく理解しているようです」と田中先生。また、江刺正喜先生(原子分子材料科学高等研究機構、兼マイクロ・ナノセンター教授)は「科学技術とは一朝一夕にできたものではなく、先人が試行錯誤の上に積み上げた知見の集積です。工学の未来を拓くには、過去から現在までの道程を知ることが必要だと私は考えます。そういう意味では、動力機構などに直に触れられるクラシックカーは、生きた教材ですね」と語ります。

 動いたと思ったら、エンジンがストップし、振り出しに。「なかなか手ごわい相手です」と田中先生。しかし、“復活”までのプロセスこそが、レストアの醍醐味。見学者の応援を受けながら、80年の時間を取り戻す作業は続きます。

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レストアにトラブルは付き物。慌てず、あせらず、ねばり強く、対処方法を考え、覚えることが大事。

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右/江刺正喜教授 左/田中秀治准教授

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2台のクラシックカーのほか、F1レーシング用エンジン(3000㏄、V10、19000rpm、900馬力)を展示。

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開館時間は10:00~17:00(平日のみ)、入館無料。


地図
※1
老朽化などの理由により劣化した、もしくは故障した自動車、オートバイ、鉄道車両、航空機、ラジコンモデル等を修復し、復活させること。通常の事故や損耗による修理ではなく、ビンテージモデルなど、「保存」の対象となる物の修復や復元に使われる言葉。, JAXA(ジャクサ)。日本の航空宇宙開発政策を担う研究・開発機関。

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