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派遣研究者REPORT

世界初の計測データを手に!
研究は“萌芽”の段階から
成長・発展的ステージへ。

クイーンズランド大学
(オーストラリア クイーンズランド州ブリスベン)
2010年7月17日~2010年9月30日(76日間)

現地メディアも大注目!オーストラリア初となる新しい臨床試験に着手。

2010年8月21日、タウンズビルの地方紙Townsville Bulletinにクイーンズランド滞在中の村越先生が登場しました。“Sound practice”と題された記事には、“日本人のバイオロボティクス専門家がタウンズビル総合病院を訪れ、オーストラリア初となる、新生児の中耳機能検査のための新しい試みを始めた”とあります(写真/図2)。現地メディアからも大きな関心を集めた研究内容とはどういうものなのでしょうか。

「私が取り組んでいるのは『新生児における中耳動特性の解析および難聴スクリーニング装置の開発』です。日本では生まれつき“聞こえ”に障害のあるお子さんは1,000人に1~2人といわれ、他の先天性疾患と比較しても非常に多いことで知られています。最近では新生児難聴スクリーニング検査を導入する自治体や医療機関も増えてきていますが、聞こえの状態を自分の意志で伝えられない赤ちゃんには、(現在行われている検査法よりも)短時間で行え、低侵襲な(体への負担が少ない)他覚的聴力計測装置が必要です」と村越先生。早期発見によって、治療や療育・教育支援の可能性を探ることができます。

村越先生は続けます。「難聴スクリーニング装置の開発には、臨床試験が不可欠であり、データベース構築のためにもある程度の計測データ数を確保しなければなりません。しかし、国内では新生児への臨床試験の機会は非常に限られています(※2010年10月から東北大学医学部倫理委員会承認のもと、仙台赤十字病院で実施されている)。そこで渡航先として願い出たのが、和田研究室(バイオロボティクス専攻)と10年以上にわたり共同研究・人的交流を図ってきたJoseph Kei博士が所属するDepartment of Audiology, School of Health and Rehabilitation Sciences。ここなら臨床試験の体制が整っており、実績もあります」。

Audiology:オーディオロジーとは聞き慣れない言葉ですが、聴覚学、聴能学とも訳され、人体が音を受容する過程・仕組みを研究する学問です。オーストラリアでは、大学ならびに大学院で専門課程を修めた後、臨床研修を経て、国家試験に合格した人が、聴覚検査・診断、補聴器取り扱いやリハビリテーションを行う聴覚専門家・オーディオロジストを名乗ることができるのです。今回の臨床研究もオーディオロジストの協力なくしては行うことができませんでした。

(写真/図1)クイーンズランド大学のセントルシアキャンパス。写真は中心にそびえるアール・デコ様式のグレートコート、彫刻の施された美しい回廊を擁することで知られている。同大には他にガトン、イプスウィッチのキャンパスがある。

(写真/図2)2010年8月21日付のタウンズビル地方紙Townsville Bulletin。村越先生の隣が共同研究協力者オーディオロジストのSree Aithal先生、そして計測に協力してくれたAidenちゃん。