サウザンプトン大学及びサウザンプトン総合病院(イギリス サウザンプトン)
2012年1月15日~2012年5月26日(133日間)
人工股関節置換術※3によりサウザンプトン総合病院より提供された骨髄骨片と大腿骨骨頭から、ヒト由来の骨髄間質細胞 (human bone marrow stromal cell, BMC) と関節軟骨細胞(human articular chondrocyte, HAC)を採取することから始まった研究。「骨髄由来の幹細胞※4を軟骨細胞に誘導する上で、関節軟骨の構成要素の一つであるヒアルロン酸に着目し、低分子量のヒアルロン酸を添加することによる作用を観察しました。当初、軟骨組織の重要な構造要素のヒアルロン酸を外部から供給することにより、効率のよい再生組織発達を促し、再生軟骨組織の機械的性能を向上させることを目的に掲げていましたが、この度の海外派遣では、軟骨細胞への分化誘導への影響を解明することにより、分子生物学的な影響を理解した上での、最良の培養方法を見出すことができました。今後は、発達した組織の機械的特性の評価を行い、培地中のヒアルロン酸の再生軟骨組織への影響を解明する必要があると考えています」。伝令RNA(mRNA)の回収が思うようにならず、安定した実験系の構築までに時間を要したため、派遣期間を延長しての取り組みとなりましたが、こうした体外における再生軟骨組織の設計方法の提案は、より汎用性の高い移植組織を作成することが可能になると考えられます。「現在、派遣先研究室の学生に追加実験を依頼しており、データがそろった段階で学術論文にまとめあげ、投稿する予定です」。
「オレッフォ研究室のある研究棟(写真/図1)は、発生医学系の研究室が集まっており、各ラボが所有する実験設備や機器は、担当教職員から簡単な講習を受けることにより、容易に利用できる柔軟なシステムになっていました。遺伝子解析や形態組織観察、質量分析などの様々な実験ができます。研究棟内では共同研究が非常に活発で、こうしたハード面を始めとした開かれた環境が最先端研究の推進力になっている印象を受けました」。渡航後しばらくはオレッフォ教授の“早口”に悩まされたという小俣さん、日を重ねるにつれて研究室内のコミュニケーションの有り様が(日本で所属したきた研究室と)大きく異なっていることに気付かされました。「アイスブレーキング的な日常会話から研究の進捗状況まで、常に情報交換を図っているんです。私が身を置いたのは医学系だったため、残念ながら彼らとメカニカルな領域の深い議論はできませんでしたが、日本での研究生活ではここまで言葉を交わしていないなぁと自省しながら会話に加わっていました。帰国後はより積極的・意欲的に対話することを心がけるようになったのは言うまでもありません」。
前述の密なコミュニケーション同様に、相互の信頼関係の構築・強化につながっているのではと思わされた“文化”に「褒める」ということがあります、と小俣さん。「先生方は一つひとつの意見に対して、簡潔にしっかりと褒めてくださいます。これには驚かされました。いわゆる“褒めて伸ばす”というものですが、実は的確な褒め言葉を探すのもたやすいことではないですよね。これは大変すばらしいと感じ入り、帰国後は努力して学生諸君を褒めるようにしています、少し戸惑いながらですが(笑)」。豊かな感受性と好奇心がとらえてきた海外大学の姿。それは小俣さんの研究・教育スタイルにも少なからぬ影響を与えています。ここに海外派遣の成果の多様性をみるようです。
本サイトに掲載されている個人情報は、本人の了解のもとに本サイトに限り公開しているものです。よって第三者がそれらの個人情報を別の目的で使用することや、本サイトの無断転載は固くお断りいたします。