ものづくりのフロンティアをゆく!

「ロボットアームの運動制御実験」「移動ロボットの運動制御実験」「人間の運動計測・解析」

海外研修
IROS2008、LAAS-CNRS、ベルサイユ大学
2008年9月22日〜10月4日

人と向かい合い、共に生きる存在へ。
リアルワールドで活躍する、
協調型ロボットの開発をめざして。


写真7 LAAS-CNRSの研究室を見学

写真7 LAAS-CNRSの研究室を見学

写真8 ベルサイユ大学にて

写真8 ベルサイユ大学にて

機械工学フロンティアの成果を
携えて、いざフランスへ。

 深遠なるロボット研究の世界。その入り口に立った修士課程1年の学生を対象に行われた「機械工学フロンティア」では、まず、3つのグループに分かれ、それぞれのテーマに基づいた研究開発を行い、多くの有効性を確認しました。

ロボットアームの運動制御実験
(書道ロボットの開発)

 現在、工場や宇宙空間において、様々なロボットアームが利用されていますが、人間が箸や筆を操るような複雑で微妙な動きを苦手とします。そこで7自由度ロボットアームの運動制御系設計と実装を行い、人のお手本を基に習字を行う書道ロボットの基本技術を開発しました。

移動ロボットの運動制御実験
(“Walking Partner”の開発)

 超高齢化社会の到来により、高齢者や視覚障がい者などが安心して安全に通行できる仕組みやシステムの必要性は、ますます高まってくるものと思われます。人間の操作する力に基づいて、安全・スムースに案内、誘導する多機能な歩行支援ロボットの開発を行いました。

人間の運動計測・解析
(実時間制御用人体モデルの開発)

 近年、人間をサポートするロボットの研究が盛んに行われています。その基底をなすのが、人の動きの科学的な解析です。そこでスポーツに興じる人間の運動動作をモーションキャプチャシステムで計測し、得られた情報から人体リンクモデルを構築することにより、人間支援ロボットシステムに適用するための基盤技術の開発に取り組みました。
 そして、機械工学フロンティアの締めくくりとして、9月22日から10月4日まで、フランスでの海外研修が行われました。まず、ニース※3において、知的ロボットとシステムに関する国際会議(IROS2008)に参加し、最新のロボット工学、特にロボットアームの運動制御に関する発表を聴講しました。続いて、トゥールーズ※4にあるLAAS-CNRSを訪問し(写真7)、ロボット研究機関の見学とロボティクスに関する討論を交わし、集大成として、ベルサイユ大学において(写真8)、研修成果の発表および質疑応答を行いました。「IROSでの聴講は、世界最高レベルの知見に触れることができる、またとないチャンスでした。発表はすべて英語なので、学生にはハードルが高いかなと懸念していましたが、多用されていたVTRやパワーポイントが理解の助けとなっていたようですね。物怖じせずに積極的に質問するなど、研究交流の場として大いに機能していたようです。多くの学生にとって初めての海外渡航でしたが、文化の違いを肌で感じ、また研究への意欲を新たにした、貴重な経験だったようです」と平田先生(大学院工学研究科 バイオロボティクス専攻、准教授)。一方の学生はどんな感想を抱いたのでしょうか。「研究の最終目的は同じでも、数多くのアプローチやプロセスが存在するというような、ロボット研究の奥深さを体感することができました。また、他国の取り組みを目の当たりにすることで、日本のロボット工学の高さ、素晴らしさを知ることができました」。なるほど、“日本から離れたところに立つ視点”から浮かび上がってくることがあるようですね。さらに、身にしみて実感したことが、英語によるコミュニケーション能力の不足。帰国後、一人ひとりが語学力の鍛錬を意識するようになったのだといいます。
 場に臨んで、気付かされる――研究の分野はもちろんのこと、文化や習慣をはじめ、海外での発見・感動がたくさんあったと学生は口を揃えます。今回の機械工学フロンティアを通じて、一人ひとりの内に刻まれたものは、決して小さくないようです。

 フィクションの中では“主役”を張ることの多いロボット。しかし、小菅・菅原/平田研究室がめざすのは、「個」として際立つ存在ではなく、人と向き合う、寄り添うパートナーとしてのロボット。主役なき時代の到来こそが、人とロボットの新しい時代の始まりなのかもしれません。

写真9

写真9 左から平田泰久准教授、松下悠史さん、斎田匡男さん、川村聡さん、小嶋洋介さん、米澤直晃さん。 「これまでロボット技術は、産業界に大きなインパクトを与えてきましたが、今後は生活支援や福祉・介護の分野で、実用化への期待が高まっていくことでしょう。時代と社会が求めるロボットの研究開発に向けて、私たちに課されていることは何か、真摯に考えていきたいと思います」と平田先生。

取材日:2009年2月10日


※3
フランスの南東部に位置する都市。人口約34万人。地中海に面する、世界的に有名な保養地・観光都市。
※4
フランスの南西部に位置する都市。人口約43万人。ヨーロッパ航空産業におけるひとつの拠点。現在もエアバスの本社が置かれている。

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