座学から実践へのテイクオフ!
大空に描くは、
努力とチームワークの軌跡。

写真1 内山勝教授
航空機の開発レースは、
有人から無人化・ロボット化へ。
長い間、人類にとって空は、憧れの存在であり続けました。ギリシア神話には、鳥の羽根を蝋で固めて翼をつくり、大空に飛び立った少年※1が出てきます。時代を経て、物語からノンフィクションへ。空を見上げるだけの時代は終わりを告げます。18世紀の熱気球に始まり、19世紀のグライダー…と、人類は英知と探究心を推進力に、大空に飛び出していったのです。そして、1903年12月17日、世界初の有人動力飛行に成功します。その立役者は、ご存知ライト兄弟※2。彼らの手になる水冷12馬力のエンジンを搭載した「ライトフライヤー号」は59秒、260メートルの飛行を成し遂げるのです――ライト兄弟の偉業から100余年、航空機は長足の進歩を遂げました。私たちも旅客機を利用すれば、難なく海や山をまたぎ、国境を越え、速く、安全・快適に目的地へと移動することができます。そして網の目のように張り巡らされた航空輸送ネットワークによって、世界中から物資がもたらされています。
そして昨今、盛んに取り組まれている航空機の新しい開発フィールドのひとつとして、無人化・ロボット化が挙げられます。無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)は、電子機器類の小型高性能化に伴い、世界中で開発レースが繰り広げられており、特に、航空ロボット(Aerial Robot)と呼ばれる、外部からの遠隔操作を受けずに自律的な飛行ができるUAVは、空撮、農薬散布、気象観測、送電線などの点検・監視、災害時の情報収集などの幅広い分野ですでに実用化がなされています。さらには、惑星探査に応用する計画も進められており、その用途はますます拡大しつつあります。航空ロボットを開発するためには、航空力学はもちろん、機械工学、電気・電子工学、コンピュータプログラミング、制御工学などの幅広い知識が必要です。学生は、教科書や講義などから得られる知識・知見を蓄積していきますが、それを実際的な“ものづくり”の場で活かす機会は、残念ながら多いとはいえません。
宇宙ロボットとヒューマノイドロボットを中心に、新しいロボティクス・メカトロニクス技術について研究する内山・姜・阿部/近野研究室では、専門の知識を実践の舞台で縦横に活用していくことを通じて、講義では体得できない経験を積むとともに、チームでの共同作業を通じてプロジェクトマネジメントの基礎訓練を行うことを目的に、修士課程1年を対象とした航空ロボットの開発に取り組んでいます。“座学から実践”への飛翔です。
2008年度の「航空ロボットの開発と飛行実験」のミッションはふたつ。「自律障害物回避飛行」「自動離着陸飛行」、それぞれのチームの取り組みと成果をご紹介しましょう。