ものづくりのフロンティアをゆく!

原子レベルシミュレーションに基づく新機能材料と試作評価

海外研修
マサチューセッツ工科大学
(アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジ市)
2008年9月22日~26日

安全・安心な社会を支える
センサ技術の開発をめざして。
カーボンナノチューブの眠れる可能性を探る。


写真1 三浦英生教授

写真1 三浦英生教授

壊さず、触らず、遠くから。
構造物の内部を視る。

 航空機事故、原子力発電所のトラブル、遊園地・公園の遊具による事故…これらの発生につながった原因として挙げられることの多い「金属疲労」。金属の疲れは、時に私たちの生命にもかかわる重要な問題となります。
 金属疲労というのは、固体金属材料に起きる進行性の劣化のことで、長時間、繰り返しかかる力によって、小さな割れや亀裂が生じ、最終的には金属が破壊されることをいいます。一般的に、強く堅いとイメージされる金属の“泣きどころ”ですが、“疲労”は金属だけではなく、プラスチック、ガラス、セラミックスなど、すべての固体にみられる現象で、正式には「疲労破壊」といいます。
 私たち人間が健康診断を受けることで、健康の維持や病気の早期発見などに役立てるように、金属なども定期検査によって、経年劣化による変形を監視し、事故やトラブルを未然に防いでいます。表面から観察できない内部の欠陥などは「非破壊検査」という、文字通り、壊さずに調べる方法が取り入れられてきました。私たちの暮らしに身近なものとしては、果物を切らずに糖度を調べる近赤外分光法という方法があります。
 非破壊検査には、放射線や超音波を照射したり、電流を流したり、サーモグラフィを使ったりする方法があります。それらは、一定の信頼性を発揮する一方で、微細な割れなどは見つけられなかったり、欠陥形状の判定がつかないなどの一長一短があり、完全な疲労破壊の防止にはつながっていないのが現状です。
 科学技術の進展は、より速く、便利に快適に、という恩恵を社会や暮らしに与えてくれますが、同時に、構造機器への負荷を強める面も持っています。一例を挙げれば(近く実用化が果たされると予想されるものとして)、最高速度時速360キロメートルでの営業運転を行う高速鉄道車両(新幹線E954形・E955形電車)、二酸化炭素の排出削減をめざした1700℃級の高効率大型発電用ガスタービン(現在1500℃級が稼働中)、さらには、現在世界最速の分速1010メートルを越えた分速1300メートル(時速約62キロ)のエレベーターなど、目白押しです。このように高速で運動・回転している構造機器の稼働状態を、非破壊・非接触で、遠隔地からでも、実時間計測できる疲労破壊予知技術が求められているのです。

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