ものづくりのフロンティアをゆく!

原子レベルシミュレーションに基づく新機能材料と試作評価

海外研修
マサチューセッツ工科大学
(アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジ市)
2008年9月22日~26日

安全・安心な社会を支える
センサ技術の開発をめざして。
カーボンナノチューブの眠れる可能性を探る。


写真2 それぞれの課題に集中して取り組む。

写真2 それぞれの課題に集中して取り組む。

科学者注目の的!優れた性質を
持つカーボンナノチューブ。

 構造機器の安全性や強度を調べるひずみセンサ※1の材料として、三浦・鈴木(研)研究室が注目したのはカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)。その新しい機能を発揮させるための材料研究と試作評価を「機械工学フロンティア」として、修士課程1年対象の前期授業に取り入れることとしました。
 さて、ここでカーボンナノチューブについて簡単にご説明しましょう。カーボンナノチューブとは、「カーボン=炭素」「ナノ=ナノメートル(nm)※2」「チューブ=円筒」と3つの言葉を合わせたもので、その名のとおり、炭素原子でできています。他にも炭素だけでできているものに、鉛筆の芯(黒鉛)やダイヤモンドが挙げられます。もとは同じ炭素でも結晶構造が違うと、軟らかい黒鉛になったり、硬いダイヤモンドになったりするのです。1985年、炭素原子によって構成されるサッカーボール状のフラーレン(直径0.7ナノメートル)が、米・英の科学者により発見されました。その後、フラーレンを電子顕微鏡で観察していたときに(偶然?)見つけられたのがカーボンナノチューブ(図1)。1991年、日本の科学者による功績※3です。
 カーボンナノチューブの大きさは、直径がナノメートル単位ととても細く、人の髪の毛の5万分の1ほどの太さ。炭素原子が六角形に配置されたグラフェンシートを筒状に巻いた形状をしています(図2)。1枚のグラフェンシートが円筒状に閉じた構造の炭層カーボンナノチューブ(Single-Walled CNT)と、複数枚のグラフェンシートが円筒状に閉じた多層カーボンナノチューブ(Multi-Walled CNT)の存在が知られています。
 研究者を惹き付けて止まないのはその特性。アルミニウムの半分という「軽さ」、鋼鉄の約20倍の「強度」、銅の1000倍もある「電気伝導性」、銅の10倍という「熱伝導性」、他にも、ガスをよく吸着する、弾力性に優れる、などの特長があります。これまでの物質にはない特性を活かして、半導体、高周波トランジスタ、バイオセンサー、ディスプレイ、燃料電池、ガス(CO2)吸着固定…など広い領域への応用と拡がりが期待されています。カーボンナノチューブを使ったひずみセンサは、従来の金属/半導体ひずみセンサとは異なり、高感度、非接触でひずみ測定が可能な計測システムとなり得る可能性があります。

図1・図2
※1
機械的な寸法の微小な変化(ひずみ)を電気信号として検出するセンサ。ひずみを測定すれば、強度や安全性を知ることができる。
※2
1ナノメートルは、10億分の1メートル。
※3
飯島澄男博士(当時NEC筑波研究所)

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