ものづくりのフロンティアをゆく!

カーネギーメロン大学(アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグ) 2009年7月16日~8月17日

それぞれの研究スタイルがあり、
異なる強みと個性がある。
受容と尊重のスタンスで臨むことの
大切さを学ぶ。

窓から見るいつもの風景。でも、少し眺める場所をかえるだけで、これまで気づかなかった新しい発見がもたらされることがある。同様に海外に身を置くことで-立ち位置や視点を変えることで-今、自分が属している国、組織、コミュニティーの美点、あるいは欠点が、はっきりとした輪郭をもって立ち現れてくるものだ。1カ月をピッツバーグで過ごした大木さんは「限られた体験で、安易な比較はしたくないけれど」という前置き込みで、日米の研究室の差異を語ってくれた。

大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
吉田・坂本・中西研究室、永谷研究室
大木 健さん 博士課程前期2年


自分の考えを、明確に自由に表明。批判厳禁がルール。
2輪移動ロボット

写真3 2輪移動ロボットは、外周にソナーセンサを搭載している。

ロボットが活動する領域は、既知の状況下とは限らず、未知環境を自律的に移動する技術の研究が求められます。こうした「移動ロボットの未知環境経路計画」には、

  1. ロボットの現在位置を推定し
    (Localization)
  2. センサで障害物を検知したのち
    地図を生成し(Mapping)
  3. 障害物を回避しつつ目的地へと至る安全で短距離な経路を計画する、
    (Path Planning)

といったプロセスが必要とされます。1と2の自己位置推定と地図生成を同時に行うことをSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)といいます。
 3の経路計画(Path Planning)の手法については、さまざまなアプローチがありますが、大木さんはあらゆる障害物から等距離な点をつないでつくる線=GVGを作成し、トポロジカル(Topological)な環境表現でSLAMを行うT-SLAMについて取り組んできました。今回の研修においては、研究所のフロアを移動探索し、地図を構築する実証実験を行いました(写真3)。

 「研究室では、とにかく自由に遠慮なくアイディアを出し合っていて、何でも言える雰囲気に満ちていました。発言がどんなにユニークで斬新なものであっても決して否定、拒否はしない。まず受け入れてから、議論を進めるという姿勢に感じ入りました。こうして数多く出される発想のなかに、ブレークスルーの種がひそんでいるのでしょうね」。また、発言や表現に関しても「どんな環境下でも臆することなく、自分の考えをはっきりとロジカルに表明していました。これは幼少期からの訓練や環境の賜物なのかもしれません」。ただし、和を尊ぶ、調和を尊重するという姿勢に関しては、日本に分がある、とも。
 「同じ専門分野を実際に見聞して、東北大学が取り組んでいる研究のレベルの高さに気づかされました。世界のフロントラインをひた走っている、と言っても過言ではないと思います」。静かな語り口調のなかに、自負がのぞきます。

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