ものづくりのフロンティアをゆく!

ストラスブール大学(フランス・ストラスブール) 2009年6月27日〜7月25日

与えられた機会を、
自ら成長する好機とする。
求知心が原動力、積極姿勢が鍵。

ある日突然、海外研修の話が舞い込んだ時、学生としてはどんな感懐を抱くのであろうか。逡巡? 意欲? 困惑? 一も二もなく「ラッキー!」と喜んだのが、ここにご登場いただく小原さんだ。研修を振り返るに当たっても「貴重な機会を与えていただきました」と感謝の意を繰り返す。これからも続くであろう小原さんの研究者としての道程。そのマイルストーンとして語られることになるかもしれないストラスブールでのひと夏の体験を振り返ってもらった。

大学院情報科学研究科 システム情報科学専攻
橋本・鏡研究室
小原 健さん 博士課程前期2年


追え! 捉えろ! マウスの行動を自動的に評価。

 eAVR研究室に在籍した小原さんが取り組んだのは「マウスの行動を自動的に評価するシステムの開発」。この研究には、次のような背景と課題があります。

写真1

写真1 幅310㎜×奥行き195㎜のアクリル製ゲージにマウスを一匹入れ、自発的な行動を赤外線カメラで撮影。

 神経病理学においては、患者の行動や振る舞いを観察することにより、神経疾患の病態を診断する手法があります。こうした神経病理診断の基礎実験として、人間の代わりにマウス(健康なマウスと何らかの疾患を帯びるもの)を使い、それらの行動を比較することが広く行われています。実験方法は、観察者が一定時間被験マウスを観察し、その行動を主観で判断するというものです。しかし、この手法には客観性を欠き、他者の行った実験結果との比較が困難であるということ、また長時間にわたる観察が難しいため、まれにしか起こらない行動は見過ごされがちであるという問題点があります。これらの課題を解決するため、カメラとコンピュータを用い、自動的に行動を評価するというのが、eAVR研究室における小原さんのミッション。将来的には、観察者の主観に基づかずに、症状を定量化し、診断精度を向上させることにつながっていくことでしょう。
 「行動」とは、姿勢の経時変化であり、姿勢は体の特定の部位(頭・胴体・尾など)同士の相対位置から求めることができます。そこでマウスの各部位を追跡するために、アクリル製のゲージに入れ、上面に設置した赤外線カメラでその動きを撮影しました(写真1)。しかし、動画情報だけに依った手法では、正しく追跡できない恐れがあるとして※2、予測を取り入れた追跡手法を用いました。その結果、150秒の間、胴体と尾を見失うことなく追跡することができました (写真2) 。

写真2

写真2 胴体と尾を別々に認識し、追跡することに成功。残念ながら頭部の追跡までは及ばなかった。


※2
赤外線カメラによって得られる動画像にはしばしばノイズが含まれ、ゲージ壁面からの反射などマウス以外の障害物をとらえたり、隠れ(尾が胴体の下に入る)によって観察が失敗したりすることもある。

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