ものづくりのフロンティアをゆく!

固体酸化物燃料電池システムと材料評価

海外研修
日韓学生シンポジウム
2008年11月22日〜11月25日

その未来は、
地球の明日とつながっている。
固体酸化物形燃料電池SOFCの
基盤研究に挑む!


写真3 数値の変化をチェック。気が抜けない実験。

写真3 数値の変化をチェック。気が抜けない実験。

専門外の領域を担うことで、
SOFCの全体像を俯瞰する。

 しかし、私たちの暮らしに使えるようになるには、材料化学的な課題がいくつかあります。従来型のSOFCは、700〜1000℃の高温作動環境を要するので、機械的安定性や耐久性に乏しいこと、さらには構成材料が限られる(金属などを用いることができない)、そして、起動停止(立ち上げ)に時間がかかる、などの難点がありました。
 湯上・井口・長尾/佐多/水崎・八代・佐藤/川田/雨澤研究室では、「機械工学フロンティア」の一環として、それらの課題にアプローチする、「作動温度の低温化を実現するための概念設計(展開コース)」と、「新規材料(ランタン・ニッケル系酸化物)を用いたカソード電極の作製と性能評価(基礎コース)」に取り組みました。「基礎コースでは、所属研究室にかかわらず、メンバーを2班に分けて、5つからなる工程(最後の「電気化学測定」のみ各研究室で行った)を担当してもらいました。このような研究室間の横断的な試みはあまりなく、我々教員にとっても新鮮でした」と雨澤先生(大学院環境学研究科、准教授)。また、あえて自分の専門外の領域を担ってもらったという点も大きな特徴。「これはSOFCの全体像を俯瞰してもらうためと、不得意分野を補完することが目的です。不慣れや戸惑いといったネガティブな情動を克服して、未知のものに積極的に向かい合う姿勢を涵養してもらいたいと考えたからです」と井口先生(大学院工学研究科 機械システムデザイン工学専攻、助教)。新規材料を用いた研究は、修士課程1年の学生にとってチャレンジングなものでしたが、アドバイスし合って進めることができたという声が多く聞かれました。また、評価テクニックの難しさを挙げる学生もいましたが、技術習得には場数を踏むことが、一番の近道。“座学から実践”を標榜する「機械系フロンティア」のコンセプトに沿うものです。
 展開コースでは、これまで蓄積してきた各人の研究成果をどのように応用できるかの検討がなされました。ここでも他研究室メンバーとの議論のなかから、研究のヒント、広がりが生まれたという感想がありました。そして、前述の基礎コースにおけるカソード材料評価とあわせ、中低温作動型SOFCに対する貴重な知見が得られました。これは、今後、論文としての展開・発表も期待できるような成果でした。
 「終盤はワークロード(作業負荷)が大きくなってしまい、朝早くから夜遅くまで、作業や実験に取り組んでくれました」と井口先生。がんばった学生たちには、海の向こうに、晴れ舞台が用意されていました。

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