ものづくりのフロンティアをゆく!

要救助者情報収集ロボットの開発とフィールド実験

海外研修
ロボカップ2009グラーツ世界大会
2009年6月29日〜7月5日

人の力の及ばない災害現場に、
人間の英知と知見で立ち向かう。
レスキューの地平を切り拓く
ロボット開発の最前線へ。


写真1

写真1 グラーツ世界大会の会場となったメッセ・グラーツ

写真2

写真2 災害現場を模した競技会場。人が歩くのも困難な箇所が続く。

写真3

写真3 窓の奥に見えるのが、赤ちゃん型ビクティム。

K21チーム

人的な活動に依らず、要救助者を見つけ出す! 災害時に大役を担うレスキューロボット。

 1995(平成7)年1月17日、兵庫県南部地震によって発生した阪神・淡路大震災※1。今でも折に触れ、繰り返し流される報道映像を強く記憶に留めている方もおいででしょう。また、ご自身を含め、ご家族、親族、友人が被災したという方もいらっしゃるかもしれません。
 大都市を直撃した震災としては世界的にも例をみない阪神・淡路大震災は、私たちに多くの教訓と課題を残しました。そのひとつが、倒壊した家屋や瓦礫の下の被災者を救出する手段と技術の開発です。災害発生時には、火災などの二次災害により救援活動者も被災者となる可能性があります。そこで人的な活動だけでは救助の手がおよばない場面をカバーするロボット機器の研究開発が議論され、その可能性が探究されるようになりました。それがレス
 キューロボットです。現在、開発が進められているものは、瓦礫や倒壊した建物内を自在に移動する高い運動性能をもち、要救助者を探査する能力を備えたロボット。多くの研究者の知見と英知を集めることにより新しいソリューションを導き出そうとしているのです。
 レスキューロボット・レスキューシステムの研究において先鞭をつける田所・大野・竹内研究室、昆陽研究室。博士課程前期1年の学生を対象とした機械工学フロンティアの取り組みは「要救助者情報収集ロボット『Kenaf(ケナフ)』を開発して、その成果を携え『ロボカップ2009グラーツ世界大会※2』のレスキュー・ロボットリーグに参戦する」というもの。開発にあたっては、千葉工業大学・小柳研究室、本学の吉田・坂本・中西研究室、永谷研究室 (航空宇宙工学専攻)、NPO法人国際レスキューシステム研究機構と共同で進められました。これはプロジェクト型の実践教育を旨とする機械工学フロンティアの精神と理念に沿うものです。
 『ロボカップ世界大会』のなかの「レスキュー・ロボットリーグ」は、阪神・淡路大震災を契機に2001年の世界大会から加わった競技。仮設の災害現場でレスキューロボット実機による災害救助活動の速度と精度を競い合います。具体的には、さまざまな障害物の置かれたフィールド(写真2)を走破し、被災者を模した人形「ビクティム」(写真3)を探索します。開発のリミット(開催日)は6月29日。決戦の場所はオーストリアのグラーツ。時間は十分とは言えません。焦る気持ちを抑え、開発に取り掛かりました。


※1
淡路島北部沖の明石海峡を震源として発生したマグニチュード7.3の兵庫県南部地震によって発生した大規模災害。死者6,434名 行方不明者3名 負傷者43,792名。戦後に発生した地震では、最大最悪・未曽有の被害となった。
※2
ロボットの研究過程で生まれる科学技術を、世界に還元する事を目標に毎年開催される世界最大のロボットイベント。第1回大会は、1997年名古屋。2009年グラーツ大会は、約40カ国から3000人以上が参加した。競技は、ロボカップレスキューのほか、ロボカップサッカー、ロボカップジュニア、ロボカップ@ホームなどがある。

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