(2019年7月23日更新)

P.05 機械システムコース

[左] 新たな太陽エネルギー利用技術―太陽熱光起電力発電―の実験装置

太陽から放射される光(熱ふく射)は、幅広い波長分布(=スペクトル)を持っています。単接合太陽電池は、使用される半導体材料のバンドギャップ以上のエネルギーを持った光しか変換できないため、バンドギャップ以下の光は損失となります。一方で、太陽電池を複数枚積層させた多接合太陽電池は、吸収できる波長域を拡げることで幅広い波長分布を持つ太陽光スペクトルを無駄なく電気に変換することができます。しかしながら、多接合太陽電池は作製が難しく、低コスト化には未だ多くの課題があります。
太陽熱光起電力発電では集光太陽光によって中間体である波長選択エミッタを加熱し、波長選択エミッタからの半導体材料のバンドギャップと整合した狭帯域熱ふく射を光電変換セルによって電力変換します。太陽光をいったん熱に変換することにより、太陽光のもつ光子エネルギーを保存したまま、別波長の光(熱ふく射)へ変換することが可能になります。これにより安価な単接合太陽電池を用いても高効率な発電が可能になります。また、太陽光を熱として利用するため、蓄熱システムとの親和性が高く次世代の太陽エネルギー利用技術として期待されています。
研究室:http://www.energy.mech.tohoku.ac.jp/

[右上] 歯科用パウダージェットデポジションハンドピース(臨床試験用)

粉体の高速衝突現象を利用した付着現象を応用し、室温、大気圧環境下で歯の主成分であるハイドロキシアパタイトを成膜して治療する技術を開発した。本手法は、新しい歯質の再構築を可能にするもので、虫歯治療や予防歯科、さらには審美歯科の分野において、従来の歯科治療を根本から変える技術として注目されている。
研究室:http://www.pm.mech.tohoku.ac.jp/

[右下] 液柱ピストンスターリングエンジン

気柱管の一部に温度勾配を与えると気体が振動を始めることがあります.このような現象は熱音響自励振動と呼ばれます.熱音響自励振動は動力として音波を取り出しているエンジンと見なすことができます.進行波音波を用いると気体はスターリングサイクルを実行するため効率の高いエンジンを作成することが可能です.写真の装置は従来の音波エンジンに液柱ピストンを組み込んだスターリングエンジンです.液柱を組み込んだことにより,気柱だけのエンジンよりも周波数が低く,比較的低温度差で動作することが特徴です.
研究室:http://www.amsd.mech.tohoku.ac.jp/

P.06 ファインメカニクスコース

[左] 金属材料強化用ナノ秒レーザ光学系

【概要】
写真は,5ナノ秒の短時間にエネルギーを集中させたレーザ光を金属表面に照射して,金属表面を吹き飛ばし,その反動で金属表面をたたいて金属を強くするためのレーザ用光学系です。特定の波長のレーザを効率よく反射するために,ミラーには特殊なコーティングが施されており,斜めから見ると,写真のようにいろいろな色に見えます。近年,生体インプラントや航空機部品として注目を集めている金属製3次元積層造形材(3Dプリント材)は,疲労強度がバルク材の半分以下,という欠点があります。当研究室のレーザを用いて材料表面をたたくと,強度を2倍にできます。

【詳細説明】
数百mJから数Jのナノ秒オーダのパルスレーザを,水中に設置した金属表面に照射すると,金属表面がプラズマ化してアブレージョンを発生します。このアブレージョンによる衝撃波(膨張波)を水の慣性力で封じ込めると,金属表面に直径数十μmから数mm程度の局所的塑性変形を付与できます。このレーザアブレージョンの衝撃波の後,負圧が発生し,この負圧のために,水が水蒸気泡(水の気相状態)となります。数百μsから数msの間に泡が発達した後,やがて泡が収縮して圧潰,再膨張します。この圧潰と再膨張時に,金属を塑性変形させるような局所的衝撃力を発生します。すなわち,一つのパルスレーザで金属を2回叩くことができます。この金属表面を叩いて強くする方法を機械的表面改質と呼んでいます。機械的表面改質により,金属組織の微細化や加工硬化,圧縮残留応力の導入が可能で,これらの作用により金属の強度が向上します。
当研究室のレーザシステムは,アブレージョンを効率よく発生させるために水に吸収されない波長532nmと,水蒸気泡を効率よく発生させるための波長1,064nmのレーザを使い分けています。これらの特定の波長を効率よく用いるために,ミラーやレンズには特殊なコーティングを施しています。当研究室のパルスレーザは,5ナノ秒間に0.85 Jのエネルギーを発生できますので,仕事率は141 MW (1.41 × 108 W)に達します。普通の電子レンジは,1400 W (1.4 kW = 1.4 × 103 W)程度ですから,10万台の電子レンジに相当します。このようなエネルギーを数十μmから数mm程度に集中させるので,金属の表面がプラズマ化して吹き飛ぶわけです。
研究室:http://www.mm.mech.tohoku.ac.jp/menu4/nano_pulse

[右上]

ジェットエンジンや火力発電所のガスタービンなど,高温機器を安全に使用するためには,高温環境での材料の強度特性を把握する必要があります.
写真の装置は,高温環境(~1000℃)における試料の強度を評価する装置です.
試験片を横向きにクロスヘッドに設置し,クロスヘッドが駆動することで引張り,圧縮の負荷を掛けることができます.
断面イメージ図に示すように,試料のみに赤外光を集光し加熱するので,急速昇温・降温が可能です。
試験片は加熱炉の中に入っていますが,装置中央部のガラス窓から顕微鏡で試料の変形の様子を観察することができます。


試験セットアップ

断面イメージ図

[右下]

半導体デバイスの電気的特性を測定する装置です.
マニピュレータに固定されたプローブ針をデバイスの配線や電極パッドへ接触させて電圧,抵抗などの測定を行います.
微細な配線や非常に小さな電極にプローブを接触させる必要があるので,顕微鏡をのぞきながらマニピュレータの位置を調整します.


測定セットアップ

拡大図

P.07 ロボティクスコース

[左] 空飛ぶ消火ロボット:ドラゴンファイヤーファイター

田所/昆陽/多田隈研究室では、水を噴射して空中に浮上し建物内に突入できる空飛ぶ消火ホース型ロボット「ドラゴンファイヤーファイター」を開発しています。火元に直接放水することで迅速な消火が期待されます。また、遠隔制御により、安全に消火活動を行うことができます。他にも空気を噴射して浮上するヘビ型ロボットや、柔軟な体をもつソフトロボットなど、革新的な技術により、実社会で役立つロボットを研究開発しています。
研究室:https://www.rm.is.tohoku.ac.jp/

[右上] 眼で見て動く産業用ロボット

ものづくりの現場では写真のような産業用ロボットが多数稼働しています.
多品種変量生産の時代を迎え,これらのロボットには,あらかじめ定められた動作を単純に繰り返すだけではなく,物体の移動や周囲環境の変化に対応しながら作業を行うことが求められています.橋本・山口研/鏡研では,ロボットが「眼で見て動く」ための3次元ビジョンシステムに関する研究開発を行っています.

研究室:http://www.ic.is.tohoku.ac.jp/ja/

[右下] 走査型電子顕微鏡のサンプル室

分子ロボットとは,分子で出来たセンサ・プロセッサ・アクチュエータの3要素を統合したシステムです.その構造やふるまいは,分子の自己組織化によって出来上がり,ヒトの眼で見ることがほとんど不可能な極微細な世界の出来事ですので,写真に示した電子顕微鏡や蛍光顕微鏡など特別な装置を使って観察を行います.

分子ロボティクス研究室:http://www.molbot.mech.tohoku.ac.jp
東北大学発・アメーバ型分子ロボット(論文):https://robotics.sciencemag.org/content/2/4/eaal3735

P.08 航空宇宙コース

[左] 風洞試験のために磁力支持により浮遊するAGARD-B模型

東北大学が有する世界最大の磁力支持天秤装置中に浮遊する航空機模型。
世界トップレベルの精度の風洞試験により、航空機の空気力学的課題を解決する。
浅井・齋藤/野々村研究室:http://www.aero.mech.tohoku.ac.jp 
大林・焼野研究室:http://www.ifs.tohoku.ac.jp/edge/

[右上] 火星飛行機

手前は,東北大で概念設計した火星飛行機のモックアップであり,背後は流体科学研究所に設置してある低乱熱伝達風洞の測定部である.この風洞などを利用して,翼にかかる空気力を測定し,火星飛行機のための翼の開発をしています.
研究室:http://www.ifs.tohoku.ac.jp/space/
風洞:http://www.ifs.tohoku.ac.jp/windtunnel/index.html

[右下] 超小型衛星

人工流れ星を用いた地球上層大気観測衛星

P.09 量子サイエンスコース

[左] 量子ビーム分析システム

粒子加速器で発生させた量子ビームを多様な分析に応用するシステム。 このシステムを活用して細胞を始めとした生体や金属材料などの様々なサンプルを分析することで、他の分析技術では得られない有益な情報を得ることができる。
研究室: http://web.tohoku.ac.jp/matsuyamalab/

[右上] ダイバータプラズマ模擬装置

DT-ALPHA 東北大学で独自に開発したプラズマ生成装置。 核融合炉のダイバータを模擬した環境を作り出す事ができる。 ダイバータにおける熱流制御手法の高性能化や、ダイバータプラズマ中の粒子・エネルギーバランスの解明に取り組んでいる。
研究室 : http://www.qse.tohoku.ac.jp/lab/lfpdapc/

[右下] 四重極電磁石とマイクロビームライン

正確な磁場制御によって量子ビームの直径をナノメートル・マイクロメートルまで収束させる。 ビームを極小サイズに絞ることによって生体内の細胞を始めとした微細領域を分析し、それらの情報を画像化することを可能にする。
研究室 :http://web.tohoku.ac.jp/matsuyamalab/

P.10 エネルギー環境コース

[左] エコラボ(Ecollab.)

エコラボは環境科学を体現するシンボリックで,かつ斬新な建物として建てられています。さまざまな分野の知識を融合した新しい視点から環境問題に挑戦できる場として,皆に親しまれる建物になって欲しいという願いを込めて,エコ+コラボ(レーション)+ラボ(ラトリ)=エコラボと名付けられています。ちなみに英語のつづりは,Eco + Collaboration + laboratoryからEcollab.となっています。
エコラボは材料や構法を工夫し,施設利用の変化に対応可能なフレキシビリティを確保した上で,現代的でシンプル・軽快な空間となるようデザインされており,本学農学研究科附属複合生態フィールドセンター(以前の川渡農場)の杉と県北の栗駒山麓からの木材を無垢材として活用しています。木材が本来もつ「暖かさ」や「柔らかさ」といった長所を活かしながらも,断熱性能や気密性能といった機能性も満足する建物となっています。
また,DC/ACハイブリッド制御システムと連動したDCライフシステムの実証研究も行えるようになっています。

[右上] スマートビルDC/ACハイブリッド制御システム用太陽光パネル

スマートビルDC/ACハイブリッド制御システムに電力を供給する太陽光パネル。エネルギー環境コースの実験棟(環境科学研究科実験棟)の屋上に250 Wのパネル240枚が設置されており,60 kWの発電能力を持っています。

[右下] スマートビルDC/ACハイブリッド制御システムの蓄電池・機器制御ルーム

DC/ACハイブリッド制御システムは,エネルギーの地産地消及び災害時における電力の確保を実現するものです。クラウドコンピューティング技術を中心とした,エネルギーマネジメントシステム(EMS)による太陽光発電及びリチウムイオン蓄電池の発電・充放電の最適制御をはじめ,発電量,蓄電量,電力消費量等の見える化,並びに照明機器やOA機器の自動制御,EV及びEVチャージャーの制御を可能とするシステムです。非常時において,商用電力が遮断されても電力が確保できるようになっています。
太陽光エネルギーで発電した直流電力を大型蓄電システムに蓄電・有効利用でき,かつ太陽光エネルギーが十分得られない場合,商用電源から出力可能なDC/ACインバータ,その他スイッチ,各種コンセント(実験装置接続分は除く),EVチャージャーが設置されています。

P.11 機械・医工学コース

[左]マイクロ流路内の培養細胞・組織のin vivoライブイメージング

生体とその周囲の流れとの物理・生理的干渉を明らかにするため、微細加工技術を利用してマイクロスケールの微小流路を作成し、その内部に細胞や組織を培養しています。流路内の流れの強さや物質濃度を変化させると、細胞や組織は環境の変化に反応し、遊泳や伸長・収縮などの運動の変化や、物質吸収・代謝などの 生体反応を示します。我々は、流れ環境下で生じる生体反応を理論・シミュレーション・実験の手法を組み合わせて調べ、流体力学的観点から生理現象を明らかにする研究に取り組んでいます。
研究室:http://www.bfsl.mech.tohoku.ac.jp/index_jp.html

[右上] 医用ハイドロゲル電極

頭蓋内に留置することで脳にしっとり貼りつき、精密な脳波計測を可能にするハイドロゲル製電極です。
全て有機物でできており、通常金属を持ち込めないMRIの同時計測にも対応できます。
臨床現場でのてんかんの診断やブレインマシンインタフェースへの応用を目指しています。
研究室:http://www.biomems.mech.tohoku.ac.jp/index_j.html

[右下] プラズマを用いたマイクロ・ナノ加工による医用デバイスの作製

一部の医用デバイスはマイクロ・ナノメートルスケール(*1)の構造体によって構成されています。この写真はプラズマ(*2)を用いてマイクロ・ナノメートルスケールの加工を行っている様子を示しています。
(*1)1ナノメートルは10のマイナス9乗メートル。例えばインフルエンザウィルスの大きさは約100ナノメートル。
(*2)分子が電子と陽イオンに分かれて運動している気体。
研究室:http://www.lbc.mech.tohoku.ac.jp/